2023/07/09 05:29

行為を終えた二人は、同じベッドに仰向けになってしばらく天井を見つめていた。このまま眠りにつくのも悪くはないが、中田のなかにはまだ“実技指導”の余韻が残っており、胸の高鳴りが治まらない状態だった。中田は、別れたサトとの行為のことを回想しはじめ、もっとも興奮したときのことを思い出して、その話をリエに打ち明けた。

「オレってMなのかもしれない…」
「なぜ、そう思うの?」

「いや、元カノとしているとき、一回だけ頼んだことがあるんだ」
「どんなこと?」

「うん…つまり、その……自分の顔の上に跨ってほしいって」
その話が終わるやいなや、リエは即座に立ち上がると…中田の顔を上から跨いでこう言った。

「どっち向きですか?」
「あっ、その…反対の向き」

リエは豊満な尻を中田の顔側に向けると、ゆっくりとその上にしゃがみこんだ。会陰(陰部と肛門の間)が鼻の上に当たり、性感を刺激する位置を探るように尻を前後に動かしてみると、相手が呼吸できなくなるスポットがある。

中田は‥リエの会陰が鼻に接触した途端、自分を覆っていた殻から解かれたような開放感を味わった。それは、男性としての社会通念であり武士が纏う鎧兜のようなものだ。リエに圧迫されて息ができなくなるほど、抑圧から開放されていく自分を感じた。

中田の陰茎は、心が満たされると同時に再び聳え立ち、はちきれんばかりに固くなっていた。リエは、一旦腰を上げて中田の方を振り向くと、“入れますか?”とつぶやいた。中田がうなずくと、そのまま腰をずらしていって固い陰茎に触れると、ゆっくりと自分の陰部にそれを挿し込んでいく。

腰を軽く動かしながら、相手の息づかいに耳をそばだてる。徐々に激しくしていくと、吐息が大きくなっていくのがわかった。リズミカルな上下運動を繰り返すうち、先端が徐々に奥深くまで入っていく。やがて中田の喘ぎ声から絶頂が近いのを悟ると、リエは腰の動きを止めて上半身のみ仰向けになるように体勢を倒した。

中田の側からは、アナルと挿入部が丸見えになる格好で、男がこの体位を好むのをリエは知っている。陰茎がすぽっと抜けないよう注意しながら徐々に腰を動かしていく。中田は、完全にマグロ状態だ。下半身で感じている快感とは裏腹に、冷徹な目でリエの恥部を見つめている。枕元に置いてある眼鏡に手を伸ばして顔にかけると、その接合部がはっきりと目視できた。

中田はその光景を脳裏に焼き付けようと…リエの尻穴を凝視した。快楽に溺れ悦ぶ脳と、冷静沈着な脳…そんな2つの人格が自分のなかに同居している。そんな分析をしながら、かつて経験したことのないリエとの至福の一時は残酷にも過ぎていくのだった。