2023/06/17 05:54

待ち合わせ場所は、幕張だった。リエのホームページ制作をディレクションするために、一度使ったことのあるホテルだ。高層階に広いカフェがありWIFIも完備されたコワーキングスペースとしてそこは使われている。ただ、今回の目的は違っていた。リエが予約をしてくれた部屋は、最上階の北側に窓のあるツインルームで、その目的とはベッドコーチング…いわゆるセックスの実技指導だったのである。

リエとそんな関係になるのはそれで3回目のことだ。最後に交わってからは7年ほど月日が経っている。それ以外にも何度か途中まで行きかけたことはあった。しかし、そうならなかったのは二人のどちらかに恋人がいたからである。リエは、一種の恋愛マニアであり男性経験はかなりの数にのぼる。一度きり交わっただけで、それ以降二度と会わなかった相手もいれば、数カ月から数年付き合った相手もいる。そのなかでも、中田はリエにとっては特異な存在で、恋愛対象ではないものの…切っても切れない不思議な縁で結ばれていた。

幕張の駅前で待ち合わせていた二人は、レストランで夕食を済ませた後、予約していたホテルにチェックインした。部屋は割と広めで北向きとはいえ窓からの眺めも良い。ふたつのベッドとは別に窓際にソファがあるのもポイントだ。中田はビールを飲みながらしばらくソファに座って景色を眺めていたが、リエの方は持参したパソコンをしきりにいじっている。どうやらネットオークションに高じているらしい。
同時にウォッチしている洋服の終了時間が近づいていたのだ。

「オレ、ちょっと近くを散歩してくるよ」
「うん」

中田はホテルの部屋を出ると、駅前まで歩いて行ってまだ開いていた居酒屋でハイボールを頼んだ。時刻は夜の9時半をまわっている。リエのオークションが終わるまでは気長に待つしかない。普通の人間関係であれば、中田が怒り出しても仕方のないシチュエーションだろう。中田は、ハイボールを飲みながら一応終電の時間を調べた。もし仮に家路につくのなら、11持15分にホテルを出れば間に合いそうだ。

ふぅ〜っとため息をついてからタバコに火をつける。

それから小一時間が経っただろうか…店内から閉店を告げるBGMが流れだした。中田はおもむろに席を立って会計を済ますと、ふたたびリエの待つホテルの部屋へと戻った。

部屋に戻るとそこにリエの姿はなく、携帯に電話をかけると同じフロアにある売店にいるとのこと。急ぎ足でそこに向かうと、タバコを吸いながら、まだオークションに高じているリエがそこにいた。

「オレ、ちょっと用事ができたから先に帰るよ」
すこし間を置いてからリエが言った。
「これから、お家に帰るんですか? わたしを一人ここに置いて」

「だって、まだ終わらないんでしょ?」
中田がそう言うと、リエはやっとパソコンの画面を閉じて立ち上がると、仕方がないというそぶりで中田の手を強く握りしめると、先ほどの部屋へと誘導していった。

部屋に戻って窓際のソファに座ると、リエはあっけらかんとこう言った。
「何から始めますか?」
「……」
中田がそれに答えられずに黙っていると、リエは隣に座ってきて耳元で囁いた。
「まずはキスからね」

いきなり、荒っぽい男が女性に対してそうするように、中田の顎を自分の顔へと向けたリエは、その肉厚な唇を合わせてきた。心臓が急に高鳴って体中に脈が響くのを感じたその時、リエは激しくディープキスをしてきた。今までに経験したことのない強烈さだ。まるで、南の島で2日ぶりに見つけたココナッツの果汁を飲み干してから、舌筋をフルに使って内部をしゃぶり回すという感じだ。

すっかり受け身になってしまった中田を、リエはベッドへと誘った。北側の窓は開いたままだ。カーテンを閉めることすらしない。リエは、窓のほうを向きながら悪戯っぽく微笑むと「開いたままのほうが興奮するでしょ?」と言った。自分の着ていた衣服を脱いで下着姿になったリエは、中田のズボンをゆっくり脱がしてからこう言った。

「まずは、中田さんのほうからしてみて」
そう言ってベッドに仰向けで横たわった。

中田は、付き合っていた元カノのときと同じように、まずは軽いキスからはじめると、その唇を徐々に下へと這わせていった。首まわり、脇の下に続いてリエの乳首へと舌先は移動する。リエの乳首をはじめ、体からはほんのりとミルクの香りがする。すこし汗をかいたのだろう、ほんの少しだけ塩っぱいが…ミルクの香りと混ざり合って奉仕するのが心地良い。

中田の舌先が、リエの太ももから最終地点へと辿り着こうとしたとき、リエがおもむろにこう言った。
「はい、向きを変わって」

中田が言われたとおりに仰向けになると、リエはいきなり中田の下着を脱がしてTシャツ一枚の姿にすると、まるで征服者のように体を下方にずらしながら“コーチング”を始めた。
「女性というのは、焦らされるのが一番感じるのよ。来るな来るな…と思っているときにすぐ舐められても大して感じないの」

そう言うと、さっそく実技指導に入っていく。まずは、ひざ小僧から始まって、舌を足首の方まで這わせたかと思うと、そのまま内もものつけ根まで這わせてからは、左右のつけ根を行ったり来たり。そして、またひざ小僧まわりに戻ると今度は舌で全体をスクロール。一瞬、こちらの顔を確認してから片足を持ち上げると、裏側を入念に舐め始める。“さあ、来るか”と思っていると…また足を戻して、今度は足の指先をしゃぶり始める。まったく予想のつかないリエの前戯に、中田は完全に翻弄され、“されるがまま”の状態だ。

相手が何をしてくるのかわからないスリルを味わったのは、それが初めてだった。そんな遊戯がしばらく続いてから、リエは避妊具を取り出してそれを自分の口に含むと、驚くほど器用に口先だけでスムーズに膜を覆っていった。
「本当は生でしてあげたいけど、これで許して」

それからは、完全に征服者となったかのように体制を整えると、まるで獲物を捉えたかのように局部をむしゃぶりはじめた。ふっくらとした唇を誇示するかのように激しく上下運動したかと思うと、両足を持ち上げて袋の筋に舌を這わす。舌先がくぼみに達するかどうかの瀬戸際でふたたび体制を元に戻すとふたたび上下運動しながら、同時に薬指で筋をなぞる。さらに小指がくぼみをとらえはじめ、それは徐々に奥へと入っていった。

そんな戯れが30分くらい続いたろうか…。お互いに、機は熟したなと思い始めたとき、リエは体を受け身の状態にして中田を迎え入れた。中田が自分のペースで上下に動いていると、リエはそれでは物足りないとばかりに自らも腰を動かしてくる。とにかく激しくないと満足できないらしい。

中田は、体制を変えてリエを四つん這いにさせると、後ろから突きはじめた。徐々に激しく掘っていくと、やっと満足しているらしい喘ぎ声をあげ始めた。中田は自分の器官に集中して、その吸盤のような吸い込みと、先端がたまに触れる軟らかくも弾力のある糸状貧毛綱の感触を体で覚えておきたいと思った。そして、膣内全体が分泌液で満ち溢れようとするその刹那、我慢の限界がやってきた中田は、相手の名前を連呼しながらフィニッシュに達したのだった。