2023/06/15 11:18

ホームページをめぐる関係


実技指導

最近、ハマっているのは映画「地獄の黙示録」だ。映画館で見そびれた、そのベトナム戦争映画をDVDで見始めてから、中田真一はほぼ毎日のように、映画のシーンを自分の日常と対比させながら過ごす日々を送っていた。中田には、姫野リエというガールフレンドがいる。リエは職業訓練でWEBデザイナー講座に通う28歳で中田より16歳若い。彼女と会うのは2カ月に1回程度だが電話は毎日かかってくる。

中田は、よほどのことがない限り彼女の電話には応答する。彼女の声を聞くのは楽しいし、その内容がどんなに激しくても、リエとは通じあっているという実感がある。彼女の話は、ほとんどが恋愛に関することで、その時々には必ず意中の男性がいるのが決まりだ。本気で恋してるのか、単に妄想に耽っているのかは定かでない。

最近は、同じスクールに通う3歳年下のハンサム君に恋しており、艷やかな30代女性のハルカさんとはライバル関係にある。形勢的には色気で勝るハルカさんのほうが優勢らしい。リエは整った顔立ちで目が大きく背も高い。一緒に歩くと、通り過ぎる人が振り向くほど目立つ存在だ。そんなリエでも形勢不利となるような女性とは一体どんな人なのか?

中田には、数カ月前まで2年ほど付き合っていた彼女がいた。5歳年下の四十路前のOLでやはり艶っぽいタイプだ。目がとても大きく、顔立ちはどことなくゴールディ・ホーンに似ていた。その女性とは床の相性こそ良かったものの、いかんせん性格が合わなかった。彼女はそれを価値観の相違ととらえていたらしく、その話は共通の友達を通じて中田の耳にも入っていた。

その女性サトは、中田の住む家の近所で別の男と知り合い、その男には付き合っている彼女がいるにも関わらず徐々に接近していって最終的には略奪するかたちで男をモノにした。最近、どうもサトの行動が怪しいと感づいていた中田だが、彼女への想いが冷めていたこともあり、やがて自然消滅するかたちで二人は別れを遂げたのだった。

独り身になった中田は、その寂しさを紛らすために二人の女性と関係をもった。それでも、その空白を完全には埋められないことに気づいて、いつの日かリエにも相談を持ちかけたのだった。

「あれから、二人の女性とも関係をもったんだけど、どうしても心が満たされなくてね」
「未だにサトさんが忘れられないってこと?」

「上手く説明できないけど……心は離れていてもカラダのほうがね…」
「それなら、いっそのこと割り切った関係になっちゃえば?」

「うん、実は彼女からもそう言われたんだけど、イマイチ踏ん切りがつかなくてね…」
「まあ……決して奨められるような関係ではないですもんね」

「オレ、何だか自信なくなってきちゃったよ」
「それって、男としての自信ですか?」

「うん」
「わかりました。中田さん、明日の夕方時間ありますか?」

「あるよ、でも何故?」
「これからわたしの方でホテルを予約しておくので…明日の夜に会いましょう」
リエはそう言って電話を切った。